Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

綺樹の入院は隠せなかった。

この所、表に立つ仕事も多かったからだった。

さやかはそのため、交通事故のための入院とした。

プレスにもそう発表した。

涼はトーストを片手にシンクに寄りかかり、その新聞を読んでいた。

飛び出してきた猫を避けるため、急ハンドルを切った結果、ビルの壁に激突。

涼はトーストをもう一枚手に取った。

単なる軽い交通事故だったら表に出さない。

入院していて、そうせざる得ない状態ならば、かなり重体だ。

そしてもう一つ考えられることは、入院と言って隠しているということだ。

真実を。

新聞をたたむとテーブルに載せた。

どうしようか。

心に決めたことをどうしようか。

涼は牛乳を飲み干すと、じっと窓に反射する光をみつめていた。
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