Storm -ただ "あなた" のもとへ-
自分の快気祝いのパーティーながら、綺樹はいつものようになるべく掴まらないよう、身を隠しながら時間を過ごしていた。
そのために同じような内容の噂話を、物陰から二回も聞いてしまった。
一回目に聞いたときには鼻先で笑ってしまったが、二回目に同じような内容を耳にすると深刻に考え込んだ。
この分だと、この噂はかなり広まっていそうだ。
本人に確かめ、対処する必要があるかもしれない。
幸いに、その機会は直ぐに訪れた。
パーティーの翌日の夜、フェリックスは出かけようと階段へ歩いていた。
夜もそろそろ中頃の時間だ。
執事だけがホールで待機している。
「フェリックス」
綺樹の部屋のドアが開いて顔を覗かせた。
「ちょっと」
部屋の明るさが逆光になり、廊下の明かりは無表情なのを半分照らしている。
どうも内容は深刻そうだ。
フェリックスは立ち止まり、ホールを見下ろしてから綺樹の方を再び向いた。
「何事だ?
どの位かかる?」
「おまえ次第」