Storm -ただ "あなた" のもとへ-

何も返答する積りが無いのをみてとると、綺樹は続けた。


「かなり悪質に言われているぞ。
 結婚もせず、恋人も持たずに、商売の女だけ相手にしている。
 そういう女しか相手にできないほど変態なのか」


フェリックスはくつくつと笑った。


「ほう?」


面白がっているのをちらりと見て、綺樹は暖炉の方へ戻りだした。


「ウルゴイティへのやっかみさ。
 後、おまえのスノッブさにね。
 だけど、そういう噂はあまりよくない」


綺樹は頭を振って、前髪がうっとおしそうに後ろにやる。

手が使えたら使いたかったのだろうが、骨が繋がるのにはまだまだ時間がかかる。

その仕草をフェリックスは目でおった。

だいぶ伸びている。

綺樹にしては珍しい。

そのまま伸ばしても悪くない。
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