Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「フェリックス」
その鋭い呼びかけにフェリックスは綺樹と視線をまじらわせた。
「なんだ?
だから、やめろといいたいのか?
おまえは私を幾つだと思っているんだ。
自分の問題は自分で対処できる。
おまえと違ってね」
綺樹はくちびるを結んだ。
「そうだな」
どこか弱弱しい返答だった。
「ただ、なんだかおまえらしくないな。
何か企んでいるなら止めはしないけど。
そんな醜聞をもつなんて」
フェリックスは視線を落とし、暖炉で燃えている火を見つめた。
きっちりと箍で締め付けていたものを一度緩めてしまう。
必要だったとしてもそれを自分に許してしまい、そして再び律する。
それは一度目よりも難しい。
自分の中に潜むものをなだめるのに、時間と手間と騙しが必要になる。
フェリックスは傍観するような目で綺樹の姿を眺めた。