Storm -ただ "あなた" のもとへ-

綺樹が近づいてくる。


「館に行くのは止めろよ。
 惚れている女がいるのなら止めない。
 そして結婚しようと思っているのなら、力を貸してやろう」


飲み終わったグラスを置こうとした動きが止まる。

綺樹へ顔をめぐらせた。

綺樹はゆっくりと歩み寄ってきた。


「ただ。
 女が抱きたいだけならば」


綺樹はフェリックスの間近で止まったのに、フェリックスはグラスから手を離した。


「私が相手になる」


フェリックスの表情が止まる。

歪むような笑いを作った。


「ほう。
 おまえが女として?
 すごい自信だな」

「そう言うと思ったよ。
 でも。
 これは私のためでもあるんだ」


綺樹はフェリックスに背を向けた。

フェリックスの中で色々な疑惑が沸いてくる。
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