Storm -ただ "あなた" のもとへ-
それを口にする前に腕が伸びていた。
後ろ向きの綺樹を強引に引き寄せて首筋に歯を立てた。
今の状態の時に、このようなことを言い出した綺樹は、飢えている肉食獣の前に
飛び出してきた小動物だ。
以前だったら部屋に帰っていたはず。
フェリックスの中でもう一人が冷静にそう考えていた。
乱暴に綺樹のシャツを引くとボタンが飛んだ。
フェリックスは耳元でささやいた。
「覚悟しろ。
あいつらは何でも耐える」
かみつくようなキスをしながら、フェリックスの頭の中で警告音が響く。
止めるべきだ。
そう思っているのに止まらなかった。