Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
疲れているのに眠れない。
うつぶせに寝るのは癖なのだろうか。
前は気づきもしなかったけど。
綺樹はフェリックスを見下ろした。
片手が上のほうに置いてある。
その指を眺めた。
長いかもしれないが、繊細という感じは無かった。
医者となって、あっという間に天才外科といわれるようになった指。
なぜ医者のままでいなかったのだろう。
その方が幸せだったのではないか。
私と同じように引っ張り出されたのだろうか。
ふっと出た思わぬ自分の考えをよくよく考えてみた。
そうなのか?
問い掛けるように顔を覗き込む。
おまえも犠牲者なの?
屈み込んでそっと口の端にキスをした。
穏やかな寝顔だった。