Storm -ただ "あなた" のもとへ-

前にあれほど何回も寝ていたのに、フェリックスの寝顔を眺めるのは初めてだ。

安らかに寝息をたてている。

無防備すぎて泣きたくなった。

なぜこんな私の前で無防備になるのか。

いつものように皮肉屋の感じは全く無かった。

何にストレスが溜まっていたんだろう。

館通いをさせていたのは。

そもそも今夜の話の持っていき方は失敗だと思った。

事前に論理の展開を練っていたにも関わらず、いざフェリックスを前にすると頭から飛んでしまった。

いつもなら絶対にフェリックスは帰っていた。

なのに提案に乗った。

そしてあの抱き方。

理性の無い。

いつもの自分自身を嘲るようだった。


「フェリックス。
おまえ、どうしたの?」


綺樹はそっと呟いた。
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