Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「何を言っているんですか。
私だって同じ運命でしょう」

「いいや。
あの小娘が死んでしまった後、今のウルゴイティはおまえ抜きでは成り立たない。
ウルゴイティ家の誰かと結婚することになるだろう。
おまえが正式な当主になるのだ」


唖然として言葉を失う。


「耄碌するには早いですね」


フェリックスはそう捨て台詞を残し、家を後にしたのだ。

自分は医者よりも経営者向きだとわかっていた。

だが父親への反発で、経営を勉強する道を選ばなかった。

それでも文句を言われない医者の職業を選んだ。

表の真っ当な職業は、妹のエリザベートの将来的な結婚に、有利に働くだろうということも考えた。

父親への反発があっても、ウルゴイティからの誘いは魅力的だった。

それに父親の仕事を継ぐわけではない。

エリザベートにもよりよい縁談が入る。

全ていい条件だった。

誤算は当主があの女だったことだ。
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