Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「まあ、あんたがいいならいいわよ」
優しく言葉を足した。
「いいわけではないんだけどね」
苦笑する。
暫くの沈黙の後、ぽつりぽつりと言葉が出てきた。
心の内を口に出すなんてことになるとは思わなかった。
やはり育ての親だからだろうか。
「綺樹が絡むと、自分を見失う。
それがたまらなく嫌なんだ。
だから。
もう決して手に届かない。
それでいいのいかも」
ライナは眉をびゅっと上げた。
「自分を見失う?
理性を失うの間違いでしょ。
あんたの綺樹に対する業の強さも、あんた自身よ。
育ちのせいか、あまりにも他人に対して淡白だけど。
本質は違うのよ。
コントロールするしかないでしょ」
「コントロールね」
苦りきった様子だった。