Storm -ただ "あなた" のもとへ-

だから離れようとしているのだろう。

忘れようと。

愛しているから。

フェリックスはファイルを閉じた。

結局、状況は前回と変わりはしない。

涼の痛手で抱かれているだけだ。

だから自分も約束の日までに片がつく。

そしてそろそろ片をつけるべきだった。

フェリックスは立ち上がると綺樹の書斎に入った。


「今、いいか?」


綺樹は書類から目を離さずに返事をした。


「涼はあの後、おまえに会いに行ったようだな」


不意の言葉に綺樹は何も答えられなかった。

微動だにしない。

フェリックスは追い詰める。


「諦められるのか?
 単に、あいつの夢と身の安全を守りたいだけに?
 殊勝なことだな」


綺樹は口端に笑みを作った。
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