Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

フェリックスはグラスにブランデーを注いだ。

綺樹がちょっとその様子を見た。

何も言わなかったが、思っていることはわかった。

確かに飲みすぎだ。

自分でもわかっていた。

食後にこんなに飲むのは珍しい。

なぜだかわからなかった。

今日はなかなか止まらなかった。

昨夜だったら綺樹は何か言っただろう。

涼の話をしたせいか綺樹は少し引いていた。

他人行儀な礼儀正しさを持ち出していた。

フェリックスは口端を笑みで歪ませてグラスに口をつけた。


「先に寝てる」


そう言って綺樹は読んでいた本を閉じると、静かに寝室へ引き上げていった。
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