Storm -ただ "あなた" のもとへ-

フェリックスは何も答えずにグラスを揺らしていた。

それを空ける。

これで止めたほうがいい。

グラスを置こうと思った。

反して手がボトルに伸びる。

最後の一杯にしようとして、残っている量に気が付いた。

これは本当に飲みすぎだ。

フェリックスは今度こそ止めると寝室に入った。

薄明かりの中、綺樹が体を横にして眠っているのが見える。

ベットに入って、こちらに向いている綺樹の背中を見た。

ふっと自分の視界が揺れて、フェリックスは固まった。

なぜ他人の女と寝るのか。

背中を凝視する。

なにを好んで他人のものに手を出しているのだろうか。

他人の男のものに。

フェリックスは背後から綺樹を抱きしめ、被さるようにしてうなじに顔を埋め
た。

綺樹は腕を伸ばすと、そっと背後のフェリックスの髪に触れた。

なぜだ。

布をはぎ、手で体をなぜまわす。
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