Storm -ただ "あなた" のもとへ-

    *

なぜこう書類が多いんだ。

綺樹はそうぼやきながら、電話とEmail、フェデラルで送られてくる書類と格闘
していた。

隣の書斎ではフェリックスが仕事をしている筈だ。

なのに今日は一度も顔を合わせていない。

一息ついたらと思っていたが、それでは一日が終わってしまう。

このままではいけない。

綺樹は用意していた書類を手にすると机を離れた。

二人の書斎をつないでいる、開いているドアをノックした。

書き物をしていた手を止めて顔を上げた。


「おはよう」

「ああ、おはよう」


フェリックスの表情はいつもと変わらなかった。

そっけなくて、まるでこちらに関心がなさそうだ。


「私の方の処理は終わったよ」


綺樹は書類を差し出した。

フェリックスは受け取るとざっと目を通している。

その横顔を綺樹は見下ろしていた。

顔色が悪かった。

綺樹は身をかがめると首に腕を回して抱きついた。
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