Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「もう必要ないか?」
ぽつりと問うた。
「ああ」
フェリックスの言葉も表情もそっけなかった。
「そうか」
綺樹はふっと微笑した。
思っていたよりも早い展開に眩暈がし、立ちすくんでいた。
「じゃあ、戻るかな」
しばらくフェリックスの顔を見下ろしていたが、綺樹はさらりと言って背を向けた。
フェリックスは黙ってその背中を見送っていた。
ふと傍らの書棚のガラスに自分の顔が写っているのをみて苦笑する。
食らいつきそうだ。
そう、殺して骨までしゃぶりそうな。
フェリックスは隣の部屋から聞こえる、電話の話し声や紙がたてる音に耳をすませていた。
椅子を回転させて窓に体を向ける。
本当に。
驚いた。
自分の中にあんな怪物がいたとは。
外では日差しで木の葉がきらきらと光を放っていた。
いや、怪物になっていたとは。
手に入らないのなら殺せ・・・。
ドアのノックの音に思索を破られ、体を巡らせる。