Storm -ただ "あなた" のもとへ-
9.悪魔をけしかける時

   *

ニューヨークに戻って、疲労がどっと押し寄せた感じだった。

体がだるくて、物事が億劫だった。

疲れているのだろうか。

今まで順調だった両手がしばしば痺れた。

びりびりとする両手をぼんやりと見つめる。

結局、涼もフェリックスも、同じだった。

最初は求められ、心を開くと相手にされなくなる。

心から大事だと思った途端。

フェリックスとは元通り、当主と当主代理だった。

いや少し違う。

以前のように仕事のことで電話をやりとりしても、彼の方に透明な壁があった。

とても硬質で冷たい。

言葉も調子も以前のようだが、その存在を感じる。

綺樹にその壁を叩かせるのも、怯ませるような雰囲気があった。

他人のように礼儀正しくさせる力があった。
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