Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

デスクランプだけしか点いていないため部屋は薄暗かった。

携帯電話が鳴り出す。

綺樹は一瞬コンピュータの画面から目を走らせたが、取ろうとしなかった。

こんな時間の電話はろくなことがない。

執拗に鳴り響くのに、しょうがなく手を伸ばした。


「はい?」

「遅い」


フェリックスだった。


「ああ・・」


綺樹はなんとなくフェリックスだとわかっていただけに、思わずそう言葉をもらした。


「こんな時間にどうしたの?」


彼の声を聞けてなんだかほっとする。


「そうだ、こんな時間だ」


フェリックスはやや不機嫌な声だった。


「用件を伝えようと、さっきから自宅に電話をしても一向に出ない。
 ということは、まだ仕事をしているか、男と寝ているかどっちだろう」

「ああ、そうだな」


まだ仕事から切り替わっていない頭で応えた。
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