Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「悪い、ちょっと無理そうかな」
おそるおそるいうと、受話器の向こうが沈黙した。
「なんとかするんだな」
電話が切れた。
かなり怒っていた。
確かにフェリックスに言われた覚えがある。
何で抜けたんだか。
綺樹は拳で頭をたたいた。
ミーティング類は無理だが、徹夜すれば他の仕事はなんとかなるだろう。
綺樹は席から立つとコーヒーをいれた。
窓に寄って、夜景を眺める。
こんな時間になると夜景の灯も少なくなって寂しさが漂う。
どうせ眠れないんだ。
綺樹は薄く微笑してカップに口をつけた。