Storm -ただ "あなた" のもとへ-
フェリックスと視線が交わる。
透明な壁は無くなっていた。
そして理性が見えた。
綺樹は手をとめると椅子の背によりかかり、フェリックスを眺めるようにして見た。
くすりと笑う。
「さすがだ」
ぱちぱちと手を打った。
「その精神力。
もう館通いに走った要因は克服できたみたいだな。
ウルゴイティは安泰だ」
フェリックスは鼻先で笑った。
「おまえとは違う」
書類を受け取ると自分の書斎へと行ってしまった。
綺樹はフェリックスの背中を思いっきり舌を突き出してから、大時計の針の動く音にハッとして再び仕事に取り掛かった。