Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「ごちそうさま」
「まだ途中だ」
ぴしゃりと押さえ込まれたのに綺樹は一瞬睨んで、再び腰をおろした。
椅子の背によりかかり腕を組んだ。
「仕事、帰るまでに終わらないぞ」
フェリックスは肉を切った。
「うまくやるんだな」
綺樹が怒りを飲み込んだのが見なくてもわかった。
なにか言うかと思ったが何も言わず、腕を組んだまま窓を睨むようにして見ている。
前までだったらかんしゃくを爆発させているか、席を蹴っていっていただろう。
成長したものだ。
だが体内で溢れんばかりに沸騰しているのが、よくわかった。
何をそんなにいらついているのか。
食後のブランデー片手に居間に移った時に、フェリックスは綺樹を眺め回した観
察する。
綺樹は一気にグラスを煽って、コンソールに置いた。
「おまえはそろそろ帰る時間だろ」