Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「おはよう」


フェリックスが部屋の境に立っていた。


「おはよう」


いつも通りの調子で返し、ふと思いついて、自分の席に戻りかけているフェリックスの背中に声をかけた。

「昨晩は」


フェリックスが足を止めて顔を向ける。


「どうもありがとう」


にやりと笑うと、フェリックスは嫌そうな顔をした。


「いいや、どういたしまして」


投げつけるように返答して行ってしまった。

綺樹はくすくすと笑ってペンを置いた。


「ああ、そういえば」


呟くようにいって顔を窓へと巡らせた。

自分の入院で溜まったウルゴイティの仕事を片付けてがら、と思っていたけど。

フェリックスの問題で、思わず後回しにした問題を解決しないと。

手首を切り落とし、鼓膜を破り、眼球を串刺しにした相手。

フェリックスも調べが付いているに違いない。

何らかの対策を講じないといけない。
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