Storm -ただ "あなた" のもとへ-
しかし不思議だ。
こういうことについてフェリックスは行動が早いのに、全く話題に触れないし、対策を講じたという報告も聞いていない。
「綺樹、直させた書類だ」
フェリックスが入ってきた。
受け取りながら視線を捉えた。
「どうだった?」
「なに?」
また変なことを言い出したという表情だった。
「そろそろ私をバラした犯人の調査がついているんじゃないのか?」
フェリックスの表情が止まった。
「ああ、そうだな」
口をつぐむ。
綺樹はフェリックスの顔を見つめた。
「誰なんだ?」
フェリックスは息を吐いた。
「察しがつかないのか?
この家が長い歴史を生き残れた理由は?」
フェリックスはスラックスのポケットに両手を入れながら窓辺に寄った。