Storm -ただ "あなた" のもとへ-
なぜ私はこの男を無防備に信頼したのだろう。
前からひっかかるものがあったのに。
フェリックスは綺樹が理解したらしいのに、窓を背にしてじっとみつめていた。
綺樹は椅子を回しフェリックスと向かい合った。
恐怖で目を見開いていた。
「おまえが・・・差し向けたの?」
無意識に席を立ち、椅子の後ろに回って盾にする。
フェリックスは逃げかけている綺樹をみつめた。
朝の光で茶色の髪の毛が輝いていた。
一層肌を白く見せている。
視線で紅を差していないのに赤い唇をなぜて顔を背けた。
「差し向けたなら、労力かけて元に戻すか?」
フェリックスの馬鹿にした口調に綺樹の恐怖心は一先ず落ち着いた。
そう。
そうだった。
それに、もしフェリックスの仕業だったら、事件後もさやかが一緒に仕事をさせる訳が無い。
彼女はとっくに情報を掴んでいるのだろうから。
何にも増して、あの時に残された自分の感覚でわかっていた。
フェリックスは違う。