Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「なるほど、おまえが私の相手をしている理由がわかった。
そうだな。
やった女は御しやすいものな。
今でも実質、当主はおまえだ。
社交の面倒なことは、私にやらせておく方が楽だな。
結婚なんてしたら、私みたいな妻はいるだけ面倒だ。
最終的なおまえの目的がどれか、判断がつかないが」
綺樹は首だけをめぐらせてフェリックスを見上げた。
「これからもおまえと寝てやるよ。
でも電話番号を帰る時までにはよこせ。
毎週ここに来るわけにはいかないんだ」
フェリックスは相変わらず腕を組んだまま、綺樹の静かに怒りの満ちた顔を見下ろした。
綺樹もフェリックスの顔を見返した。
フェリックスの目が冷ややかになった。
「さかるな」
それは自分自身への言葉でもあった。