Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
「美人だな」
ユーリーは北欧系だ。
間近で見ると、やはり綺麗さが違う。
翳りの無い金髪に、澄んだ青い瞳。
高い鼻梁に、赤い口元は微笑しているようだ。
「ありがとう。
綺樹も美人だよ」
あからさまなお世辞に、綺樹は鼻にしわをよせた。
それを見てユーリーがくすくす笑う。
「あの肖像画、よく描けていたね」
廊下にかかっている歴代当主の肖像画の最後に、出来上がったばかりの綺樹の肖像画が昨日かけられた。
正式なローブデコルテを着て、アームロングをはめ、ウルゴイティに代々伝わるいわくつきの宝石を身に付けている等身大の肖像画だ。
綺樹の傍らに描かれているテーブルには、ウルゴイティが持っている数多くの宝石や勲章が置かれ家の歴史と栄光を語り、背後の窓からは黄金色の畑や森が見え、豊かな土地による財産を現している。