Storm -ただ "あなた" のもとへ-
静かに長く息を吐くと、とりあえずもう少し酔いを醒ますことにした。
目を閉じる。
服にあたる水音が雨のようだった。
自分の体温に神経を張り巡らせて、何も考えずその音だけを聞いていると脱力してきた。
このままずっと休んでいるのは悪くない。
この所、定期的に襲ってくる疲労が綺樹を包みだした。
ああ疲れたな。
自分の頭ががくりと傾いたのに、はっとして目をあけた。
どれだけ経ったのか。
冷水のシャワーは、もはや冷たいだけだった。
綺樹は身震いをしてあわてて立ち上がり水を止めた。
着替えて書斎に戻ると、待ち構えたように熱々のジンジャーティーが運ばれてきた。
ちらりとフェリックスの書斎の方を見て微笑した。
気にはしてくれるらしい。
さて、片付けるか。
綺樹は席に着いた。