Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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「元医者が側にいながら、体調が悪化して帰って来るとはどういうことかしら?」
「すまない」
フェリックスはそう言うしかなかった。
あの日の夕方から綺樹のくしゃみは止まらなくなり、熱が出た。
次の日はベッドから起き上がれず、休養させようとしたが、目を離すとベッドに
仕事を持ち込んで集中する。
そして体力を消耗する。
風邪が悪化する。
悪循環をたどるばかりだった。
結局ウルゴイティの仕事が終わらず、ニューヨークに持ち帰った。
ダバリードの仕事が終わった夜中に片付けているようだ。
「せめて持ち帰った仕事だけでもなんとかならないのかしら?
寝せないと」
「そうなんだが・・・そっちの仕事はなんとかならないのか?」
「あの子が自分で抱え込んだのだから、難しいわね」
さやかは難色を示した。
「肺炎にならないといいのだけど」
フェリックスはため息をついた。