Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

「元医者が側にいながら、体調が悪化して帰って来るとはどういうことかしら?」

「すまない」


フェリックスはそう言うしかなかった。

あの日の夕方から綺樹のくしゃみは止まらなくなり、熱が出た。

次の日はベッドから起き上がれず、休養させようとしたが、目を離すとベッドに
仕事を持ち込んで集中する。

そして体力を消耗する。

風邪が悪化する。

悪循環をたどるばかりだった。

結局ウルゴイティの仕事が終わらず、ニューヨークに持ち帰った。

ダバリードの仕事が終わった夜中に片付けているようだ。


「せめて持ち帰った仕事だけでもなんとかならないのかしら?
 寝せないと」

「そうなんだが・・・そっちの仕事はなんとかならないのか?」

「あの子が自分で抱え込んだのだから、難しいわね」


さやかは難色を示した。


「肺炎にならないといいのだけど」


フェリックスはため息をついた。
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