Storm -ただ "あなた" のもとへ-

当の綺樹は自分の体調の悪さをあまり気にしていなかった。

熱は下がった。

歩くとふらつくし、目の前が揺れる事もあった。

咳もとれなかったが、頭はいつもどおり回った。

それで十分だった。

今日のダバリードの仕事に見切りをつけると、自宅に引き上げてウルゴイティの仕事をすることにした。

夜勤の警備員に挨拶をしてビルを出る。

待っている車に乗ろうと、ビル出口の階段を下りているところで不意にまた目の
前が揺れた。

上下の感覚がわからなくなり、気が付いたら階段から落ちていた。

警備員に助け起こされる。


「ありがとう」


綺樹は手を借りながら車に乗った。

掌が痛いぐらいで、ひねりはしなかったようだ。

ほっとしてシートに体を埋めた。

少しうとうとして睡眠をそこでとると、コンドミニアムの書斎に入った。

ウルゴイティの仕事がダンボールに詰まっていた。

とろうとして身をかがめるとまた眩暈がした。

しゃがんで目を閉じやり過ごす。

携帯がちょうど鳴り出したのに、その姿勢でポケットから引っ張り出した。
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