Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「はい?」
「まだ起きているのか?」
「起きていると思っているから電話してきたんだろう」
閉じていた目を開けた。
もう目の前は回っていない。
綺樹はやれやれとため息をつくと、書類を手に立ち上がった。
電話の向こうが沈黙している。
「どうした?」
ため息にフェリックスが聞いた。
あの後、体調を崩して結局フェリックスとは寝なかった。
かといって、今はまだ男と寝たいとは思わない。
電話番号はまだ聞かなくてもよさそうだった。
「いや、ちょっと立ちくらんだだけ」
綺樹は電話を肩に挟んで手で書類をめくった。
領地の生産性についてのレポートだった。
「ちゃんとウルゴイティの仕事もしているぞ」
書類の文字が波打つ。
手から書類が落ちた。