Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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フェリックスから連絡を受けたさやかは、医者と共に駆けつけた。
危惧した手術の後遺症や、風邪の悪化ではなく、単なる睡眠不足だった。
やはり綺樹には生活管理人か、健康管理人がそばについていないと駄目だ。
フェリックスはわかっていたが、もつれすぎている糸をどう解くか迷っていた。
綺樹は涼の存在を異常な程に自分の中で消去していた。
消去ではなくて隔離か?
自分にはもう関係ないものと、存在を箱に入れて棚の上に上げてしまった。
そして自分の身を多忙に追い込み、箱の存在を忘れようとしている。
普通の自己保全の一つだが、あそこまで多忙に追い込むのは異常だ。
彼女の中の涼の存在の強さだろう。
フェリックスは椅子から立ち上がり、窓からバルコニーに出た。
あの時、襲われなかったら。
いや、違う。
自分があの時に涼へ連絡をしなかったからだ。
なぜ涼に自分がした立場を譲れなかったのか。
なぜ綺樹を抱いたのか。
自分にも綺樹にも、こういう先しか無いとわかっていたのに。