Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

フェリックスから連絡を受けたさやかは、医者と共に駆けつけた。

危惧した手術の後遺症や、風邪の悪化ではなく、単なる睡眠不足だった。

やはり綺樹には生活管理人か、健康管理人がそばについていないと駄目だ。

フェリックスはわかっていたが、もつれすぎている糸をどう解くか迷っていた。

綺樹は涼の存在を異常な程に自分の中で消去していた。

消去ではなくて隔離か?

自分にはもう関係ないものと、存在を箱に入れて棚の上に上げてしまった。

そして自分の身を多忙に追い込み、箱の存在を忘れようとしている。

普通の自己保全の一つだが、あそこまで多忙に追い込むのは異常だ。

彼女の中の涼の存在の強さだろう。

フェリックスは椅子から立ち上がり、窓からバルコニーに出た。

あの時、襲われなかったら。

いや、違う。

自分があの時に涼へ連絡をしなかったからだ。

なぜ涼に自分がした立場を譲れなかったのか。

なぜ綺樹を抱いたのか。

自分にも綺樹にも、こういう先しか無いとわかっていたのに。
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