Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「成介か?
 久しぶりだな」


成介は呼吸一つ分、間を空けた。


「この頃、なかなか連絡が付きませんでしたね」


含みの多さにフェリックスは苦笑した。


「取り込んでいた」


そっけなく答えると、電話の向こうで成介は微笑したようだった。


「いい情報がある。
 君の希望が叶いそうだ」

「もちろん、あなたのもでしょう」


フェリックスは低く笑い声を漏らす。


「君の腕次第だが」

「信頼していただいて結構ですよ」

「そうだろうな」

慇懃な返答に、期待していないような声で切り返し、フェリックスは主のいない隣の書斎へのドアを見つめながら、話し始めた。
< 229 / 448 >

この作品をシェア

pagetop