Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

たいていは隔月に帰ってくるが、珍しく次の月に綺樹はウルゴイティに帰ってきた。


「暑いな」


フェリックスの書斎に入ってきての綺樹の第一声だった。

そしてシャツの袖をまくる。


「珍しいな」


ローテーブルに置かれたジャーからグラスに水を注いでいる綺樹をフェリックスは眺めた。

今日帰ってくるとは全く聞いていない。


「なにが?」


氷がグラスにぶつかって音を立てる。


「催促か予定がなければここに戻ってくることなどないのに」


綺樹は片眉をちょっとあげた。


「二月分仕事をためると、この間のように倒れたときに回すのが大変になる。
 だから毎月、ただし滞在日数を半分にしてくることにした」


グラスを持ったまま綺樹は自分の書斎へと行ってしまった。

まあ正しいな。

そう思ったがフェリックスは席を立ち、後を追った。


「今度から帰ってくるときは連絡をしろ」


綺樹はパソコンを立ち上げながら、部屋の境に立っているフェリックスを、ちらりと見上げた。
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