Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「おまえに回す書類など段取りがあるのだから」
「突発的に帰ってくると」
綺樹はにやりと笑った。
「何か不都合なことが露呈するかと思ってね」
フェリックスは鼻先で笑った。
「だろうね。
おまえは用心深いものね。
じゃあ」
綺樹がにっこりと笑った。
「とてもおまえと寝たくなって」
フェリックスはあからさまに嫌な顔をした。
「結構な理由だな」
綺樹はくつくつと笑いながらフェリックスの背を見送った。
「本心なんだけどね~」
さらに言葉を投げつけたが、フェリックスが乱暴に椅子に座る音しかしなかった。
嫌な顔をする前に一瞬だけ表情が止まったような気がしたけれど。
綺樹は窓を開けた。
風が抜ける。
なぜだろう?
わからない。
気のせいだろうか。
書類が飛びそうになる音に我に返った。
やめようやめよう。
そんなことを考えていたら仕事が終わらない。
やるべきことは山とあるのだから。