Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

涼はアメリカ大陸を南下していた。

綺樹とは最後のパーティーで会ったきりだった。

そしてあの後、交通事故で入院。

本当に交通事故なのか。

本当に入院していたのか。

真実として何が起きたのだろうか。

知る手段は無かった。

今の自分には何の手段も無い。

心に決めたことを実現する手段も。

涼は床のモップがけを終えてバケツを取り上げた。

砂漠が近いせいで、毎日、店内には相当の砂埃がたまった。

結構な重労働だ。

バケツの水を捨てようと、店のドアを開けると日差しが強かった。

全て干上がらせるような力強い光。

目を細めて空を見上げる。
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