Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「久しぶり」
にこやかに笑っているタキシード姿の涼がいた。
「ああ、久しぶり。
驚いたよ」
自分が驚愕の表情を浮かべてしまっただろうと思い、取り繕うためにそう言った。
「一体、どうしたんだ?」
「西園寺のニューヨークセクションに飛ばされてね。
だから今日は挨拶も兼ねて出ている」
西園寺に戻った?
なぜ?
綺樹は食い入るように涼の顔を見つめそうになり、あわてて顔を廊下の先に向けた。
「そう。
ちょっと休もうと思っているんだ。
よかったらどうぞ」
歩き出した綺樹の後ろを付いていきながら、社交的な誘い言葉に涼は苦笑していた。
商談が出来るようになっている部屋のため、なんでも揃っていた。
アルコールもサイドボードの上にずらりと並んでいる。
綺樹は迷いも無くウィスキーのグラスを手にとった。
「好きなのをどうぞ」
涼を見もせずひらりと並んでいるアルコールに手を振り、自分は暖炉の側のソファーに座った。