Storm -ただ "あなた" のもとへ-
暖炉に彫られている飾りを見つめながらグラスに口をつけた。
どうして戻ったんだ?
なぜ?
「みんなは。
みんなは元気?」
綺樹は暖炉の側に立った涼を見上げてにっこりと笑った。
「みんな?」
涼はちょっと戸惑った表情になる。
「ライナに、成介、執事の藤原」
「ああ。
元気だよ」
「それはよかった。
いつこっちのセクションに移ってきたんだ?
わざわざ後継者を送り込んで、西園寺は何を始めようって言うんだ?」
これは結構ハードルが高そうだな。
綺樹のすっかりビジネス的な様子に涼は苦笑した。
「移ったのは先週だ」
綺樹はその苦笑を見逃さなかった。
「そう。
私は。
今はインドや中東の方を担当しているんだ」
苦笑の意味がわかっているだけに、涼から視線を外した。
「アメリカ分野に関して何かあったら、直接は相談には乗れないが、紹介はするよ」
「助かるよ」
綺樹は涼の姿を眺めた。