Storm -ただ "あなた" のもとへ-
手足の動き、肩の線、当たり前だけど変わらない。
視線を顔まで上げると、目が合った。
「今日は」
綺樹は目を反らせた。
「ダバリードのあらゆる分野の担当者が勢ぞろいだ。
そうそうに無い機会だよ。
コネクション作りとして、逃す手は無い」
部屋から出て行けという意味だと涼にはわかった。
「そうだな。
だからおまえに必ず会えると思って来た」
なんだって?
涼に視線を戻しそうになったが綺樹は動かなかった。
「まあね。
出ないわけには行かないからね」
涼は綺樹の横顔を見ていたが、ふっと息を吐いた。
「またな」
あっさりと涼が出て行ったドアの音を背中で聞く。
綺樹はいつの間にか、グラスが空になっているのに立ち上がった。