Storm -ただ "あなた" のもとへ-

もうこの世界には絶対戻ってくるまいと思っていた。

だから自分が行動を起こさなければ、涼と二度と会うことも無く、関係ないと思っていたのに。

新しいグラスを取ろうとした指が震えているのに気が付いた。

しっかりしろよ。

綺樹はグラスをぎゅっと握った。

もう関係ないじゃないか。

そうだ。

関係ないのだ。

戻ろう、仕事だ。

綺樹はグラスを煽ると、きびすを返して綺樹は会場へと向かった。

会場に綺樹の姿を再び見つけて、涼は正直驚いた。

いつもだったらもう戻らないで、帰ってしまっているだろう。

これは綺樹の成長なのだろうか。

だとしたら、もう自分は必要とされないかもしれない。

ああ、違った。

涼は口元の微笑をグラスで隠した。

自分が必要なのだった。
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