Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
パーティーの後、綺樹はペントハウスに戻らなかった。
仕事がしたかった。
会社の自分の部屋でシャワーと新しい服に着替えた。
初めて気が付いたが、家が無くても十分ここで暮らせる。
綺樹は妙に感動して席についた。
出勤したさやかは綺樹が既に部屋にいるのを見て、ふと立ち止まった。
いつもだったら、通常のことなので余り気にしない。
さやかは方向を変えた。
「おはよう」
綺樹は突然の訪問に驚いて顔を上げた。
「おはよう、どうしたの?」
「早いのね」
さやかは質問を無視した。
「うん、まあ」
綺樹は書類を置いた。
続きになっている応接室に、ドレスと靴が床に散乱しているのを、ちらりと横目で見た。
「帰らなかったの?」
綺樹は立ち上がるとドレスを拾い上げてソファーに放り投げ、靴を隅の方へ蹴飛ばした。
「涼、来てたわね」