Storm -ただ "あなた" のもとへ-

    *

パーティーの後、綺樹はペントハウスに戻らなかった。

仕事がしたかった。

会社の自分の部屋でシャワーと新しい服に着替えた。

初めて気が付いたが、家が無くても十分ここで暮らせる。

綺樹は妙に感動して席についた。

出勤したさやかは綺樹が既に部屋にいるのを見て、ふと立ち止まった。

いつもだったら、通常のことなので余り気にしない。

さやかは方向を変えた。


「おはよう」


綺樹は突然の訪問に驚いて顔を上げた。


「おはよう、どうしたの?」

「早いのね」


さやかは質問を無視した。


「うん、まあ」


綺樹は書類を置いた。

続きになっている応接室に、ドレスと靴が床に散乱しているのを、ちらりと横目で見た。


「帰らなかったの?」


綺樹は立ち上がるとドレスを拾い上げてソファーに放り投げ、靴を隅の方へ蹴飛ばした。


「涼、来てたわね」
< 240 / 448 >

この作品をシェア

pagetop