Storm -ただ "あなた" のもとへ-
一呼吸置いて、綺樹はゆっくりと振り返った。
「そうだね」
「西園寺に戻ったそうよ」
「らしいね」
綺樹は両手をズボンのポケットにいれて壁に寄りかかった。
「理由を聞いた?」
「いや」
「そう。
私も、本当の理由は、聞かなかったわ」
綺樹は息を吐くように笑った。
さやかは綺樹を上から下まで見下ろした。
「どうするの?」
ばかばかしいと思いつつ聞いた。
綺樹は首を傾げた。
「なにを?」
さやかはため息をついた。
「邪魔したわね」
部屋を出て行きかけて最後に振り返った。
「そうそう、涼に久しぶりに会って気が付いたんだけど」
綺樹は嫌な予感がした。