Storm -ただ "あなた" のもとへ-

綺樹は立ち上がった。

どのみちきりがない。


「涼?
 上がるけど、どうする?」


耳と肩で携帯をはさみ、シャツの両袖を下ろした。


「ああ、お疲れ。
下にいるよ」

「ん」


携帯をズボンの後ろポケットに突っ込み、部屋を出た。

下に既にいるということに驚いたけど。

エレベーターの鏡に映る自分の姿にうんざりした。

シャツにパンツ姿でも、もうちょっと色気が出ないものか。

化粧すれば、少しはマシか。

違うな。

この性格でいる限りは無理だ。

大体なぜそんなことを考えるんだ。

綺樹は可笑しくなって笑った。

あいつの前で、女でいる必要は無い。

警備員に挨拶をしてビルの階段をおりる。
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