Storm -ただ "あなた" のもとへ-
トイレから出た綺樹はそのまま自分の席を通り過ぎた。
「帰る」
「おい」
いつもの事とはいえ驚いた。
「待てって。
車に乗れ」
後ろから追いかけられた綺樹は躊躇してから車のほうに向きを変えた。
「大丈夫か?」
開けてくれた助手席に座る。
涼はシートベルトを伸ばすと留め金にはめた。
身を起こしかけて綺樹のくちびるが目の前にあるのに、一瞬軽くあわせて身を起こした。
運転席に回ると、まっすぐ前を凝視したままの綺樹の横顔を見た。
「もう一度やり直さないか」
綺樹が身を一つ震わせた。
「なにをやり直すんだ?」
涼は笑った。
確かに色々な関係があった。
「夫婦関係を」
綺樹は息を止めた。
「最悪だ」
次の瞬間、綺樹は車を降りていた。