Storm -ただ "あなた" のもとへ-

フェリックスはベットに上体を起こすと、綺樹の顔にかかっている髪をかきあげてやった。

今度は何日眠っていないのか。

じっと見つめていると唐突に目を開いた。

決して起きるまいと思っていたフェリックスは、思わず動きを止めた。


「シャワー、先に借りていい?」


目の前のシーツを見つめながら綺樹が聞いた。


「ああ」


綺樹はしばらくじっとしていたが、自分の言った言葉を思い出したようにベットから降りた。

フェリックスが次に出ると、バスローブ姿のまま明かりもつけず、リビングのCD
デッキの前に立っていた。

小さな音でピアノ曲が流れている。

ショパンのワルツ。
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