Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「父親に殺させたいのか?
 自分の手を汚さず、私を殺したい?」


フェリックスの瞳に光がともった。


「だから成介と連絡をとったの?
 フェリックス。
 成介に何を渡し、涼を戻らせた?」

やっと綺樹の話したいことがわかって、フェリックスの瞳から光が消えた。

やれやれとため息をついた。


「綺樹。
 おいで」


綺樹は唾を飲み込んで顔を反らせた。


「急に押しかけて悪かった。
 もうニューヨークに戻るよ」


部屋から出て行こうとする。

過去の話でフェリックスに対してすっかり怯え、傷つき、触れられるのに恐怖を感じている。


「来い!」


声の勢いにドアノブを掴んでいた手を止めた。

フェリックスに感情の無い目を向けた。

軽く両手を挙げてみせる。


「ちゃんと仕事をこなし、成果をもたらしている。
 これ以上、おまえとさやかは何を私に望むの?
 何も逆らっちゃいないだろ。
 何を企んで涼を差し向けたのかわからないけど、おまえはいつも的確だ。
 どうして欲しいんだ?
 私に涼をどうして欲しいんだ?」


綺樹は力なく右肩でドアに寄りかかった。
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