Storm -ただ "あなた" のもとへ-
気持ちが下降を始める。
やっぱりそうなんだろうか。
間違った認識で、行動したのだろうか。
今頃、恨まれ、憎まれているのだろうか。
バイオリンの音色が、胸の泡立ちをなぐさめる。
「あれ、寝ちゃった?」
ユーリーはバイオリンを止めて、覗き込んだ。
くすくすと笑う。
「寝顔はかわいいね。
まだまだ・・」
ユーリーは言葉を切った。
自分が受けている印象よりも、幼い気がする。
「彼女、いくつ?」
フェリックスはちらりとユーリーに視線を投げた。
「普通だったら、大学に入ったばかりだ」
「え」
ユーリーは思わず絶句した。
「綺樹。
こんなところで寝るな」
フェリックスは屈みこんで、肩をゆすった。
「うん」
返事は返ってきたが、夢の中のままのようだ。
眠りが浅い綺樹にしては珍しいが、理由はわかっていた。
また、ぐだぐだと悩んで眠れないに違いない。
フェリックスは抱え上げた。