Storm -ただ "あなた" のもとへ-

驚いた。

やっと青臭い時期から熟していくというのか。

こちらはこれからただ老いていくというのに。

ぞっとした感覚が背筋に走った。

こちらの衰えを悟られる前に手放してしまえばいい。

綺樹の寝顔をみつめる。

か、本当に孕ませてしまおうか。

どの男にも逃げ込めないように。

フェリックスは指を伸ばし、綺樹のこめかみから頬の線をなぞった。

死んだようにぴくりとも動かない。

やれやれだ。

本当に、やれやれだ。

フェリックスは立ち上がると、静かに部屋を出て行った。
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