Storm -ただ "あなた" のもとへ-
*
いつものようにはっとして目が覚めた。
綺樹はがばりと起き上がると、寝具からエゴイストの香りがたった。
手のひらで顔をなぜる。
窓の外は明るかった。
主はどこにいる?
できれば顔を合わせずに帰りたかったが、そうもいかない。
寝室から廊下に出ても、家の中は朝の静けさの中だった。
カサカサと紙のこすれる音がする。
「起きたか」
ダイニングテーブルに座っているフェリックスは、新聞から一瞬だけ目を離した。
「座れ」
朝から逆らう気力も無い。
綺樹は手近な椅子に腰をおろした。
なんとなく見回した。
モノトーンの殺風景な部屋かと思っていたが、意外にもホワイトが多かった。
所々に置かれた植物のグリーンが映えている。
壁一面に作られた本棚に並ぶ本は、医学書ばかりだが、建築家のオフィスのような雰囲気だった。