Storm -ただ "あなた" のもとへ-
寝室へ運び戻ると、ユーリーと目が合った。
にやにや笑っている。
「なるほどね~」
ユーリーの含みのある言い方に、フェリックスはあからさまに嫌な顔をした。
「20も違えば、ほとんど親子だもんね。
なんで手をこまねいているのかと思っていたけど」
「20も違わない」
ユーリーはフェリックスの即答に近い否定に笑った。
「だけど、別にこういう家柄では珍しくないだろう。
昔からよくあるじゃないか。
親子ほどの年の差なんて」
「そんなに離れていない」
また即答で返してしまい、フェリックスは苦い顔をした。
ユーリーはくすくすと笑いながら、弦を締めなおしている。
「でも、それでわかった。
時々、妙に精神的に幼いように思ってたんだよね。
それに、意外に終始貫徹した態度を取れない理由。
まだ10代とは。
そりゃもろいな」
フェリックスは無言のまま雑誌を手に取る。
再びユーリーはバイオリンを弾き始めた。
情景が広がる。
春の草原。
まだ少し冷たい風。
ぽつりぽつりと咲き始めた、小さな花が揺れる。
フェリックスは膝に雑誌を載せたまま、耳を傾けていた。