Storm -ただ "あなた" のもとへ-
4.波紋
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まずはアメリカ大陸に渡った。
西園寺を出た以上、自分が自由に使える金は、ライナの所にいた時に貯めたバイト代だけだ。
さすらいながら、稼ぐ必要があった。
海外で働くという初めての経験において、語学は英語だったらなんとかなりそうだ。
ビザの問題があったが、働き口はみつかったし、泊まる所も見つけられた。
ホテルとは名ばかりの部屋は隙間風が入り、寒い。
スチームは壊れているらしく石炭のストーブが置いてあった。
見せてもらった時、石炭ストーブという存在に思わず笑って、しばらく泊まることに決めた。
ほとんど水しか出ないシャワーで一日の汗を流すと、石炭ストーブに継ぎ足して火力をあげる。
ドアがノックされたような音がした。
酔っ払いが通ったのか。
涼は無視をした。
もう一度ノックされたのに、身構えた。
こんな時間、日付が変わって2時間ほどの時間に、自分に来る客はいない。
涼の英語の問いかけに返ってきたのは、日本語だった。