Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「雪の女王みたいだな」
涼はまぶしそうに目を細めてみつめる。
綺樹は小首を傾げてこちらに顔を向けた。
「ラナさんに引き取られるまでの一時、施設にいたんだ。
そこで読んでもらった絵本に出てきた雪の女王みたいだ」
綺樹がふっと息を吐いて笑ったような表情をした。
「まあ、冷酷かもね」
涼はぐっと言葉を飲み込んだ。
「初めてだったんだ。
あんな綺麗な絵本をみたのは」
ぶっきらぼうに言う涼を少し考えるように見つめ、ストーブに顔を戻した。
傍にあった石炭入れに足を上げる。
ドレスと同じ生地で作られ、ビジューで飾られた靴。
涼は座っていたベッド下からバッグパックを取り出した。
「汚れるからこっちにしろ」
左腕で綺樹の両足をすくい上げて、すり替える。
綺樹はじっと自分の足をみつめてから、靴を放り投げるように脱いで、ストッキングに包まれた足を上げた。
ただストーブの中で、石炭が燃えているのを見つめている。
涼はその横顔が、どことなく落ち込んでいる様子に、やっと気が付いた。